meineko’s blog

元つくばの某独立行政法人勤務の植物屋です。最近は、ほぼ、突発天体の話題です。

ノーフィルター

そもそも、ノーフィルターは和製英語ですが、CCDでの撮像の際、特段の測光用フィルターを付けずに撮影することです。
測光して、VSOLJに報告する際に、「C」という記号を使うことを、(随分昔に)便宜的に決めました。
#clearの略???


これは、わい新星の連続測光をする際に、少しでも光量を稼いで、S/Nを稼ぎたいというニーズによるものです。
変動の原理からして、測光バンド毎の変動幅の差は大きくないこと、superhumpの周期の変動を追うことには差支えが少ないことが、幸いしています。
で、普段は、差測光をしているわけですが、ゼロ点を決めておいたほうが、都合が良いので、カタログのV等級を基準にしています。これも、多分に、便宜的なやり方です。
時々、色の赤い星しか、近くに適当な明るさの比較星が無くて、困る羽目になります。
#赤い星は、ノーフィルターだと明るく写って、その星のV等級から期待される明るさとは多きな差がでます。


EW型の食変光星の極小時刻の観測の場合も、ほぼ同じ色の星のペアによる食による変光で、測光バンドの違いによる影響が少なそうなので、ノーフィルターでも良いかもそれませんが、測光バンドが広いと、大気による吸収の影響も受けやすくなるので、連続撮像中の地平高度変化(Air massの変化)の影響で、光度曲線が歪みそうです。
そのことが、極小時刻の決定法によっては、時刻決定に影響を与えそうですので、やはり、フィルターをかけたほうが良さそうです。


本来は、フィルターをかけた場合でも、標準システムへの変換をしないとダメなのです。
ただ、やってみると、判るのですが、差測光の精度0.01-0.001等に見合う精度で、変換係数を決定するのは、至難の業です。
まぁ、その他もろもろの要件もあって、標準システムへの変換をせずに、そのまま、測光値を報告している方が多いのが現状です。


比較星を復数使って、等級を出すソフトがいくつかあります。
例えば、Astrometricaとか。
比較星を復数取ると、ゼロ点の決定精度が上げられる(偶然誤差を小さく出来る)という利点の他に、カタログの等級の精度の悪さを平均化出来るという利点があります。
ただ、この方法でも、ノーフィルターの場合は、系統誤差が入る余地がないかというと、かなり、怪しです。
そもそも、ノーフィルターでの測光で、カタログのVフィルターを基準に等級を決めて、それが、何を表しているのかは、よくわからないという根本的な問題がありますw
#多色測光された変光星の光度曲線に、C等級での値をプロットしてみれば、すぐに、ずれているのが実感できます。
#赤い星や青い星の等級が思っていたのから大きくハズレるのは、よく経験するところです。
#Astrometricaを使っている方の多くは、対象が、彗星みたいに太陽に照らされている星ですので、影響が少なさそうです??
#でも、小惑星の場合は、表面の色のバラエティが大きいのでどうでしょう?


そもそも、CCDのチップの波長感度特性には、チップによって、例えばこれだけ差があります。
CCD Sensor QE (Quantum Efficiency) Comparison(Xpírijensis astrofotografa )
これを、まとめて、Cで表しているところに無理がありますw
それを、承知の上での、C等級です。


まぁ、要は、わい新星のsuperhumpの観測の時以外は、測光用のフィルターをかけて撮像したほうが良いという話です。
デジカメの話は、また、別の機会に?