meineko’s blog

元つくばの某独立行政法人勤務の植物屋です。最近は、ほぼ、突発天体の話題です。

わい新星の連続測光

捜索をされている方から、「発見された突発天体が、わい新星らしかったら、連続測光をするってよく聞くけれど、具体的には、どうやってるの」って質問が出たので、少し書きます。


わい新星の連続測光測光ってのは、単純に、短時間の露出で、間をおかずに、何時間か撮り続けるだけです。
明るさによりますが、わたしの場合は、たいてい30秒露出で、沈むまで撮り続けます。
暗い星が多くて光量を稼ぎたいので、クリアフィルターないし、フィルター無しでの(ノーフィルター)での観測になります。
#露出と露出の間には、ダウンロードにかかる時間が挟まるので、観測屋さんは、ダウンロード時間が短いカメラにこだわりますw


それを測光して光度曲線(横軸を時間、縦軸を等級にしたグラフ)を書くと、例えば、このような短時間変動(ハンプ)が受かります。
https://meineko.com/LC/TCP_J14420760-1758238-LC-220217.jpg
わい新星のアウトバーストで、明るくなった降着円盤が、連星の軌道運動によって見る向きが変わっているのを反映していて、軌道周期や、降着円盤の様子などの情報が得られます。
こういう変動幅が大きくて、きれいなハンプが受かるのは、地球からみて連星の軌道面(それにそって存在する降着円盤)を、横から見えているケースで、軌道を上から見ている場合は、小さな振幅の変動しか受からない場合もあります。


アウトバーストが始まってから、降着円盤の状態が変化するに従って、典型的には、アーリースーパハンプ、スーパーハンプ、レイトスーパーハンプと、変動の幅と周期が違う3つのステージのハンプが観測されます。
というわけで、わい新星の観測は、アウトバーストが始まってから、アウトバーストが収まる2週間から1月くらい、晴れれば、毎晩追い続けることになります。
それぞれのハンプから得られる情報が違うので、これら全過程を追えるのが望ましいです。


これまでアウトバーストを起こすことが知られていなくて新規で発見されるわい新星は、アウトバーストの間隔が長くて、増光幅も大きなやつが多いのですが、それらは、わい新星の中でもWZ Sge型と呼ばれるサブタイプのものがほとんどです。
WZ Sge型星は、連星系の進化の過程で、軌道周期が徐々に減少(連星の軌道が小さくなって両星が近づいている)して90分以下になっているので、最低、90分追い続けるのが鉄則です。
でも、天候や発見されたのが夕方に西に低い位置だったり、明け方昇ってきたばかりですぐに夜が明けるケースも多くて、なかなか、思うようには観測できません。
#この文章を書くにあたっても、良い観測例を探し出すのに、結構、苦労しました。