meineko’s blog

元つくばの某独立行政法人勤務の植物屋です。最近は、ほぼ、突発天体の話題です。

Folding@home by PS3

PS3でのfolding@homeプログラムを昨晩から走らせだしました。
1晩1個というところでしょうか?

順位を競ったり、グラフィックを眺めて楽しんだり(PS3、すげーと喜んだり)、科学への貢献を誇りに思ったりするだけで良いのでしょうが、商売柄、少しは、何をやっているのか理解しなければと思っています。
近所にタンパク質の構造屋さんも多数いまして、原理は理解できないけれど、研究の流れみたいなものは、むかし、さわりだけ教えていただきました。


で、今、自動で送られて来るのはVilin関係のが(うちでは?)多いようです?
計算する時間のスパンが決まっているいるようですが、指定の時間中に構造が収束するとは限らないし、時間毎に区切って、みんなで分担で計算というところでしょうか??



さて、まず、おさらい?


タンパク質は、設計図であるDNAの上には、アミノ酸に並ぶ順番が書かれているだけです。
#このアミノ酸の順番を一次構造と言います。

DNAのコピーのRNAを元にタンパク質を作る時には、この書かれている順番をもとに、アミノ酸をつぎつぎ繋いでいきます。
で、この1本の鎖の様に並んだアミノ酸のつながった分子は、どういう訳か自動的に、または、時には正しい構造に導くシャペロニンというタンパク質の力を借りて、折り畳まれていって、立体的な構造を作ります。
立体的な構造を取ることで、細胞の形を決めるタンパク質や動きのあるタンパク質は、その機能に必要な形になります。
また、酵素では、アミノ酸の順番の上では離れていたアミノ酸同士が隣同士になたりもして、酵素の触媒反応を行う活性中心を形成したりもします。
また、特定の構造を取った分子しか活性中心に近づけない様な構造を取ることで、酵素の基質特異性が決まったりします。
これらは2次構造と呼ばれます。

そのあと、同じ種類同士や何種類かのタンパク質同士が集まって、さらに大きな構造を作ったりします。
たとえば、真ん中に大きな開いた構造を作って、分子やイオン等が細胞膜を通過する時のチャンネルを作ったりします。
これを3次構造と言います。


で、foldnigの研究というのは、この1次構造からどうやって2次構造ができるのかその仕組みや過程を研究する分野です。
DNAから1次構造は判っているけれど、もっと構造は判っていないタンパク質の構造を決めるという時に応用されることもあります。
なぜなら、タンパク質自体の構造を決めるというのは、なかなか大変で、構造がきちんと測定されているタンパク質の数は、近年、精力的な研究で急速に増えつつあるもののまだ多くはないからです。
あー。ついでに、2次構造を決めるのは、水素結合と電気的な結合/反発が主で、3次構造の場合はこれに疎水的な結合が...むにゃむにゃ。


タンパク質の構造計算てのは、初期構造から微妙にずらしていって、最終的に熱力学的に一番安定な構造を解きます。
foldingの研究の時は、ほどけた構造を初期値にすることが多そうです。
#目的にもよっては、1次構造が似ていて、構造が決定されている類縁のタンパク質の構造を初期値にしたりします。
#また、ここのアミノ酸を他のアミノ酸と替えてみたらどうなるだろうという計算の時も、すでに決められている構造を初期値にすることも。


微妙にずらす時に、各アミノ酸の構造および、隣近所との位置関係によって、動かせる範囲に限界がでます。その積み重ねをしていって、本来の安定な構造を目指す訳です。
この手の構造計算、初期値に出来るだけ依存しない様に計算方法を工夫するはずですが、それでも、完全に依存せずに解くことは出来ないので、微妙に初期値を替えて何度も計算して、結果を重ね合わせて表示ということをよく行います。その点でも、みんなで分担の意義があります
#最後の一行を書くためだけに書いたのでした。なげーな。説明。


この計算、実は、並列化するのに向いています。
で、クラスター化したPCで計算しようという研究もあります。
天文でのGRAPEの様に、専用のプロセッサーを作って何個も載せたマルチプロセサーのボードを作ろうという研究をしている人もいます。
PS3のCELLは、コアが9個もあるし、パイプラインの扱いとか、こういう計算に向いているらしいです?


さて、少しは、計算方法の勉強もしないと。