meineko’s blog

元つくばの某独立行政法人勤務の植物屋です。最近は、ほぼ、突発天体の話題です。

GW Lib2

かすてんさんが、id:ugemさんのところで、「GW Libの何がどう大物なのか分かりません。その辺りを教えて下さい。あるいは分かりやすいサイトなどありましたらよろしく。」と書かれていたので、解説。
じつはこの星、googleっても、あまり情報は出てこないようです。
しかし、玄人受けする大変注目されていた星でした。


GW Lib(てんびん座GW星)は、1983年8月10日にチリのGonzalezさんにより9等明るくなっているところを発見され星で、発見当初は、新星とされていました。
その後の研究で、新星でなく、増光間隔の長いタイプのわい新星(矮新星)だと正体が分かりました。WZ Sge型とか、TOAD(最近聞かない)とかとも呼ばれています。
この明るくなった時に、9等と明るいのが、まず、注目される理由の一つです。(普段は、18等。)
明るいと、詳しい観測がし易いのです。
#撮影時に露出時間が短くて済むので、測光でも分光でも、時間分解能の良いデータが取れます。
#また、口径のそれほど大きくない望遠鏡でも、観測できます。
#分光観測では、波長分解能のよいデータも取り易いです。


で、もう一つ、注目されていたのが、分光観測から判っていた連星としての周期が、77分と短いことです。
わい新星は、白色わい星と主系列星(または、それよりやや進化の進んだ星)のペアからなる近接連星系です。
#どのくらい近接かというと、伴星の主系列星の外側のガスが、白色わい星に向かって流れ込んで、まわりに、ガスの円盤(降着円盤)を作っているくらい近いです
わい新星の進化の理論では、連星系は角運動量を失って徐々に近づいて公転周期が短くなっていきます。
その後、ある程度まで短くなると、ふたたび、星が離れ始め、再び公転周期が長くなること予想されています。
観測でも、公転周期の下限がありそうだということが判っているのですが、GW Libは、丁度、その下限に当たる周期の段階にある星ということで、詳しく調べれば、理論が正しいか検証できるのではないかということで、以前から、注目されていました。


しかし、注目にも関わらず、その後、再び増光しているところが捉えられることは無く、昨晩、24年ぶりに増光が捉えられたのでした。
増光の第一発見者のStubbingsさんは、オーストラリアのアマチュア観測者で、わい新星の増光監視の第一人者です。
これまでも、数々の天体の増光を捉えて、わい新星の増光時の追跡観測に貢献されています。
以前、ハワイでお会いした時に、id:v4641sgrさんが尋ねたところによると、同じ星を時間をおいて1晩に2回確認するといわれていました。
id:ugemさんも、ずっと、追いかけられていました。(天候が悪かったのが悔やまれます)


今回の増光では、広島大学のかたな望遠鏡があるのも、注目される点です。
わい新星の連続追跡が出来るある程度大きな口径の望遠鏡であることに加え、赤外での同時観測まで出来ます。