meineko’s blog

元つくばの某独立行政法人勤務の植物屋です。最近は、ほぼ、突発天体の話題です。

V5エピトープタグ

Invitrogen社V5エピトープタグについてのご連絡
#link先はPDF


遺伝子組み換えの実験は、安全に行われるよう法律で規制されています。
実験を行う場合には、法律に基づいて申請を行って、安全審査の上、許可をもらいます。


特に、ウィルス由来の遺伝子を扱う場合は安全面で厳格に審査を行う必要があることから、監督省庁へ申請を行って大臣確認を行う決まりになっています。
ただし、以前から、長いこと使われてきた実績の中で、感染性には関与せず、毒性も無いことがわかっているものは、法律の別表で定めてあって、所属の研究機関の審査でよいことになっています。
逆に、別表に載っていないものは全て大臣レベルでの審査対象です


で、特定の遺伝子の解析を行う時に、大腸菌細胞内でタンパク質を作らせる(発現させる)ことは日常的に行われる様になってきました。
タンパク質を作らせる時、タグと言って、ペプチド配列をつけておくことで、発現後の精製や抗体による検出をやりやすくしたりします。
様々なタンパク質を扱う時に、ぞれぞれのタンパク質に得意的な抗体を用意するのは大変ですが、タグを認識する抗体を使えば、種類の違うタンパク質をまとめて扱うことが出来ます。
また、タグの配列がついていることで、形質転換したタンパク質ともともと細胞内にあった同種のタンパク質と抗体で区別することも出来ます。
タグは、タンパク質発現様のベクターに元々組み込んで置きます。自分の解析したい遺伝子をこのベクターに読み枠を合わせて組み込むと、タグ付きのタンパク質を作れます。
発現用ベクターと検出用抗体をセットにして、試薬メーカーが様々なシステムを開発供給しています。<背景説明終わり。>


で、Invitrogen社でも、V5と名付けたウイルスの由来のタグを組み込んだ発現ベクターを発売しています。
V5のペプチド自体、元々のウイルスのタンパク質のほんの一部分ですし、メーカーでの安全性を確認をした上で開発しているはずです。
でも、法律では、別表に載っていないのだから、大臣確認実験です。
#実際に別表に載っているのは、遺伝子自身でなくて、それを組み込んだベクター毎です。


次の別表の改訂まで、扱いに注意ということになります。
#使うのには、大臣確認を得るための申請が必要で、確認に、長いことかかります。
#別表に載っていれば、研究所内での審査のみでOKなのにorz。


で、じつは、別表、結構、漏れがあるらしく。
以前から問題なく行っていた実験が、法律施行後は、大臣確認が必要なことに。
#どれも、改訂待ち。


実験を安全に行うために審査を厳密に行うことは大切ですが、なにからなにまで、大臣レベルでの確認が必要となって申請数が多くなりすぎれば、実験を行う上でマイナスということだけでなく、本当に審査が必要なものの審査に影響がでるかもしれません。
別表で定める方式の欠点を露呈しているようですが、(<なにせ、研究開発で、新しいものが増えていくのは必然ですから。)
でも、安全を法律で担保するには仕方ないかな?


あ、法律が出来る前も、(ちゃんと監督官庁が決めた)自主規制という形で規制はありました。野放しではなかったので。念のため。