meineko’s blog

元つくばの某独立行政法人勤務の植物屋です。最近は、ほぼ、突発天体の話題です。

きりん座

最近、何度か、「きりん座は、もともとは、らくだ座だったのだが、誤訳できりん座になった」という話を聞きました。
誤訳があったとしたら、いつ、どういう経緯でと思い?資料はないのかなと思っていました。


で、wikipediaで調べると、きりん座の自出が書いてあります。ただ、日本語版、英語版どちらも、Ian Ridpathさんの資料を出典に挙げているのに、事実関係が微妙に違います。
#どうも、研究の進展で、Ridpathさんの記述も変遷しているようです。
以下、きりん座の自出に絞って、Ridpathさんのwebで公開されている資料を要約してみます。


きりん座のCamelopardalisというのは、ギリシャ語のラクダのように首が長くて、豹のように斑点がある動物という言葉を語源としたラテン語だそうです。
きりん座は、Petrus Planciusさんによって1612年に作られた星図に、いっかくじゅう座等と一緒に載せられたのが最初だそうです。
ただし、図が残っているだけで、文書は残っていないそうです。
1624年に、Jacob Bartschさんが、星図に載せたのと一緒に、説明文を残していて、旧約聖書にでてくる「リベカがイサクに送ったラクダを記念して作った星座」と書いてあるそうです。
ただし、Ridpathさんの表現では、「Bartsch interpreted it as the camel on which Rebecca rode into Canaan for her marriage to Isaac」としています。
あくまで、Bartschさんの解釈だと。
なお、Bartschさんの本の出版年に関して、1614年としているものもあるが、誤植によるものだとしています。
#Wikipediaの英語版では、この1614年の方を採用していて、one year laterと書いてあります。


で、Bartschさんの星図の絵はコブがなく、どうみても、ラクダではないですね。まぁ、斑点模様もないのですが。
#わたしの想像でしかありませんが、Planciusさんにしろ、Bartschさんにしろ、実際のキリンやラクダを見たことが無かったのかも?


で、きりん座、その後の星図では、CamelopardalusともCamelopardusとも書かれていることがあり、不統一なんだそうです。
ヘベリウスやボーデの星図では、Camelopardalusとされているそうです。
これに関しては、1908年にCambellさんが、ハーバード天文台回報に、一番古い記述はなにか、動物のキリンを生物学者はどう記述してきたのか、天文学者によって使われてきたなかで最もポピュラーだったのはどの名前かの3点から、資料を調査され、Camelopardalisが、最も適当であると結論されています。
IAUで、88星座が確定されたのが、1928年だそうですから、その20年前です。興味深いですね。


というわけで、日本語のWikipediaの記述のように、「一時期「らくだ座」と呼ばれた」が、正確っぽいですね?


ちなみに、大昔、きりん座の所有格について、天文ガイドに書いた記事で、新標準星図の表を元にして記述したところ、違うのではないかと読者から指摘がありました。
で、原恵さんが、キリンがオスかメスかわからないのでという回答を書いてくださる羽目に。
#実際の性別とは別に、ラテン語のCamelopardalisの女性名詞なのか男性名詞なのかという問題があるのですが、ご存知のように、ラテン語は母国語として使う人が居ない言語ですので、難しいです。原さんが、気を効かせた回答をされたのだと理解しています。ありがとうございました。